「魔術師」の番号「1」から読み解く魔術師のメッセージ
今後、大アルカナの番号(数字)に着目して、大アルカナ各々の啓示を解説しようと思います。
数秘術(ゲマトリア)の要素も含まれますが、数字の持つ元型的なメッセージを強く説明したいと思います。

前述では「0」の「愚者」を解説しました。
実は「0」の「愚者」というカードは、もっともっと多くのメッセージが存在します。
数学的には、「0」という数字の明確なる発見は、かなり遅かったのが史実です。
人間の認識は、「無」を意識することが困難だからです。
それは、赤ん坊〜幼児を観察すれば誰でも分かるはずです。
2歳の幼児に「無」の意識はありません。
「あるか?」「無いか?」という意識はありますよ。
例えば、好物の食べ物(なんでも構いません。仮にイチゴだとしましょう)が、1個でもあれば、2歳の幼児はそれを食べようとします。そこにイチゴが無ければ、食欲すら浮かばないでしょう。逆にイチゴが複数個あって、それを全て取り払ったら、泣くはずです。なぜなら、食べたいのに「食べることが出来ない」というストレスから泣くのです。
しかし純粋な数学的な意識は全くありません。
このことから、幼児には「0」という数字自体を認識していない、という証拠です。
では「魔術師」の持つ「1」はどうでしょう。
「1」という数字は、原始時代から認識できた数字です。
「1」は存在そのものです。
PC言語ならば、「0」と「1」の二進法を使いますが、「0」は電源をOFFし「1」ならば電源をONします。
ここからも「1」が存在そのものであることがわかります。

小学校・中学校では、徒競走を体育の授業で行いますね。皆様も経験があるでしょう!
「位置について、用意、ドン!」と先生は謂います。
この「位置」という言葉は、「一」と非常に関連しています。
「位置」とは、ある出来事や状況に対しての、ポイントであり、基準値です。この「位置」がわからなければ、「2」も「3」も全く意味不明です。
例えば、階段を例えてみましょう。
最初の一段目が「1」ですよね。
仮に日本人一般的な成人男性が階段を昇るとしましょう。その段の「高さ」「広さ」「幅」「材質」「場所」「環境」などの情報が無ければ、実際に階段を昇ることはできません。
日本人一般成人男性の平均身長は170cmですから、一段目が10mもあれば、昇ることは不可能です。逆に材質が柔らかなスポンジならば、これもまた昇るのは困難でしょう。
この基準値が「1」そのものです。
「1」は「位置」なのです。
タロットに戻りましょう。
今の事をそのままタロットに当てはめてみましょう!
「魔術師」はタロットの基準なのです。
「魔術師」をシンプルに連想するならば、「スタート」と思い浮かびますね。
それは「位置について」と同じ事を示しています。
「魔術師」というカードは、なぜ「1」番なのでしょう?
別に「2」でも「3」でも構わないと思いませんか?
しかし現実に「魔術師」は「1」です。
「魔術師」の絵から、連想するならば、「創造」「創造力」というキーワードはすぐに浮かびます。

ここで旧約聖書の出番です。
旧約聖書の「創世記」です。
創造主である神は、「私は在るという者である」と語っています。
つまりPC言語の「1」です。
同時にヤーウェ(YHWH)は、無から宇宙という有を創造したわけです。
数学的に謂えば、「0」から「1」を生み出したわけです。
この創造がなければ、世界は永遠に無のままです。
現に「魔術師」のカードの絵柄には、その象徴すべきシンボルがたくさん描かれています。
「WAND」「CUP」「SWORD」「PENTACLE」の四大元素・・・「火」「水」「風」「地」ですね。
そして魔術師は、左手に「WAND」を持って掲げています。
要は「火」を掲げているわけです。
なぜならば、創造には「火」は絶対不可欠だからです。
参考までに・・・
人間はエデンで、土から創られました。
では天使は?
「火」から創られたのです。創造の手伝いをするためです。
よって悪魔も「火」でできています。

皆様は「悪魔」と「天使」は別の存在だと思っているかも知れませんが、それは大きな間違いです。
正確には「悪魔」という単語も間違いです。
正解は「堕天使」です。
そうです。
別に、ヤーウェは「悪魔」を創ったわけではありません。「悪魔」と言われる存在が産まれてくることは、創造主ならば知ってたでしょう。
でもわざわざ、創ったわけではありません。
これは旧約聖書外典に載っていますが、悪魔は元々は天使です。
ルシフェルはミカエルの双子の兄ですが、天使の中で最も美しく、最も強く、最も能力が高かったわけです。曙の明星と謳われるぐらいの天使です。
天使の長ですね。
天使のヒエラルキー(階級)には多くの説がありますが、ある説ではルシフェルはセラフィムです。最高位の天使ですね。
ルシフェルがなぜ、天界でクーデターを起こしたのかも多くの説があります。
一つには「傲慢」です。曙の明星ですから、神の玉座に座りたかったのでしょう。
一つには「嫉妬」です。エデンで人間が創造されたことで、神は天使は人間に使える存在であることを厳命しました。何のパワーも無い人間に、あらゆるパワーのある天使が下僕になるわけです。
一つには「堕落」です。最高位に位置している者は、努力をしません。
因みに「傲慢」「嫉妬」「堕落」は全て七つの大罪です。
ジョン・ミルトン著『失楽園』では、七つの大罪が解説されています。映画の『セブン』もそうですね。ブラッド・ピッドとモーガン・フリーマンの映画です。
七つの大罪は、「暴食」「強欲」「傲慢(虚栄)」「堕落」「淫乱」「憤怒」「嫉妬」です。
各大罪には、悪魔が相関されています。
「暴食」はベールゼブブ、強欲はバール、傲慢はルシファー、堕落はベリアル、淫乱はアスモデウス、「憤怒」はマモン、嫉妬はレヴァイアタンですね。
傲慢をルシファーとして、強欲をサタンとしている説もありますよ。
ただ、サタンは称号として使われる説を取っています。サタン=ルシファー説です。
「創造」と「1」の相関関係がわかってきましたか?
「1」の番号が付いている「魔術師」は、タロット全体の基準を示唆するわけです。
それは「創造力」のエネルギーです。